• 堀内 昶 京都大学名誉教授が 紫綬褒章 を受章
  •  2007年春の褒章において、 堀内 昶 京大名誉教授(原子核理論・昨年3月に京都大学を定年退官) が紫綬褒章を受章されました。 これは、堀内名誉教授の 多年にわたる研究教育活動と 数々の優れた研究業績が高い評価を受け認められての受章であり、 当該分野である原子核物理学をはじめ 同じ基礎科学に携わる研究者にとっても、 良き励み・良き刺激となる喜ばしいものだと思います。  以下に、堀内 昶名誉教授の研究業績等を紹介します。

     堀内名誉教授は、永年にわたり、原子核物理学の理論的研究を行い、 重要な研究業績を数多く挙げ、基礎物理学の発展に大きく貢献してきました。 特に、原子核の構造および反応機構の解明の面に力を入れ、 軽い原子核のクラスター構造と反応の分野において多数の先駆的で重要な研究を行い、 クラスター研究グループの指導的研究者として活躍してきました。 また、原子核の構造と反応を統一的に扱うことが可能なミクロな量子多体系の新理論である反対称化分子動力学法 (AMD法)を構築し、 不安定核を含む様々な原子核の実験結果の理論的分析と予言に多大な成功をおさめるなど、 原子核物理学の理論と実験の両面において大きな貢献をしてきました。

     堀内名誉教授は、まず、酸素、ネオン原子核の励起状態に関する反転2重項による説明により、 現代的なクラスター物理の基盤を与え、次いで、共鳴群法と生成座標の方法の同等性を明らかにし、 微視的クラスター模型による研究の隆盛をもたらしました。 その後、多体クラスター模型の構築や、原子核間ポテンシャルの微視的な理解などの研究を進め、 原子核の性質を理解する上で平均一体場の形成とともに離合集散のダイナミクスが本質的に重要であることを明確にし、 その結果、軽い原子核においてクラスター構造は、殻構造に並ぶ基本的な要素と考えられるに至っています。 更に、原子核衝突のシミュレーションを用いた研究へと進み、重イオン衝突の初期段階からフラグメント生成に至る過程を、 平均場ダイナミクスからクラスター形成に至る相関構造の変化と捉え、 量子力学的な分子動力学理論である反対称化分子動力学法(AMD法)を構築し、 原子核物質の性質や多重破砕過程を理論的に解明するとともに、 不安定核を含む様々な原子核の実験結果の理論的分析を行い、殻構造やクラスター構造など、原子核の多様な存在形態を、 よりミクロな自由度から解明するなど、原子核物理学の重要で新たな潮流を切り拓いてきました。

     堀内名誉教授は、数多くの国際会議において招待講演や基調講演を行い、自らも4回の国際会議を主催し、 国内では、京都大学基礎物理学研究所、大阪大学核物理研究センター、理化学研究所、湯川財団、 理論物理学刊行会の運営に携わるなど、国内外での原子核物理分野の発展と基礎科学の発展に広く貢献しています。

     これら一連の業績が高く評価され、1996年に日本物理学会論文賞、2000年に仁科記念賞を受賞されています。 これらに続いての今回の紫綬褒章受章は、当該研究室として非常に喜ばしいことです。

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